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2005/11/13

ファミリーテニス

日曜の朝、子供たちは仲良くテニススクールへ出かける。以前、僕たち夫婦が通っていたスクールに。

妻とは学生時代にテニスを通じて知り合った。結婚してからもふたりで近所のテニススクールに通っていた。子供が生まれてからも時間帯をずらして続けていた。成長した息子達と4人で週末にダブルスの試合をするのが夫婦の夢だった。だから、子供たちにも少しずつテニスを教えていた。

しかし妻が病に倒れた。その時に僕はスクールを止めラケットを置いた。妻はその後、体調と折り合いをつけながら医者にも内緒でスクールに戻っていった。子供たちを一緒に連れて。

そしてあの日を迎えた。五月晴れの高原のテニスコートで4人でテニスをした。妻が亡くなる半年前のこと。抗がん剤の調子がよく妻はなんとかテニスができる状態。下の子は当時9歳。その日にどうにかサーブが打てるようになった。なんとか間に合った。

そしてコートレンタルの時間が押し迫った時、4人でダブルスの試合が始まった。子供たちはこの幸せが末永く続くと思っていた。妻の胸中は量り知れないが、たぶんさようならを言っていた。僕は心でボロボロに泣いていた。

逞しい若者とのファミリーテニス三昧とはいかなかったが、夢は叶った。子供たちはその後もテニスを続けている。僕のほうは妻との思い出が深すぎて、踏ん切れないうちに、誘われるままラケットをピンポンのそれに変えてしまった。

春の雪のような淡いひとときではあったが、確かに望みは叶った。だから、僕はこれからも生きていける。その思い出を胸に。

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